1977

END OF THE SHOW/DENNIS WILSONFROMPACIFIC OCEAN BLUE
                     (DENNIS WILSON−GREGG JACOBSON)
 夏も終わりなので、夏の終わりに一番ぴったり来るのは,ビーチ ボーイズのワイルドワンといわれ、何かとトラブルを起こしながら、甘いマスクで高い人気を得てきたウィルソン兄弟の次男のデニス ウィルソンの唯一のソロアルバムの最後の曲のエンド オブ ザ ショウが思い浮かぶ。
 ビーチ ボーイズのドラムを叩いていた彼は、かっこよさと、ワイルドな雰囲気でアイドル的な人気をえていたものの、曲作りは、長男のブライアンがしていたし、リードヴォーカルも弟のカールウィルソンやブライアン、いとこのマイク ラブ、幼なじみのアル ジャーディンがしていたのであまり目立つことがなかった。そんな彼も60年代の終わりごろから少しずついい曲を書き始め、味わいあるヴォーカルを聞かせるようになった。
 そして、77年にバンドのオリジナルメンバーでははじめてのソロアルバム「PACIFIC OCEAN BLUE」を完成させた。曲作りで、あまりビーチボーイズに貢献してこなかった彼が、スケールの大きな、ちょっと切ない名作を作り上げた。メンバーのソロアルバムといったら、あまり期待できないものなのだが、どっしりとした音作りで、感動を誘う。このEND OF THE SHOWは、このアルバムの最後の曲で、「大きな海の夕暮れをじっと見つめている」みたいなちょっと切ない雰囲気を思い浮かべる。海のうねりがストリングスとピアノの音から聞こえてきて、少ししゃがれたデニスの声がこのアルバムの終宴を飾るのである。こんなにいいソロアルバムを作ったデニスは、次のアルバムを作ることなく、真冬の海に飛び込み、そのまま帰らぬ人になった。死ぬまでワイルドな人だったのか?
 とってもいい曲です。
(8月27日)

HERE COMES THE FLOOD/
PETER GABRIEL

FROM PETER GABRIEL(PETER GABRIEL)
 洪水の中に、ブルー メタリックの車に半ば生をあきらめたようなぼう然とした顔のガブリエル。どんな心境でこの曲の歌詞を書いたのだろうか?
 ジェネシス脱退後のファースト ソロアルバムの最後の曲。キッスのデストロイヤー、ルー リードのベルリン、アリス クーパー、フロイドのウォールを作ったボブ エズリンがプロデュースしているので、派手なストリングスやダイナミックな構成で感動的な曲である。しかし、当然ながら、オーバー プロデュースであるという声も根強く。ガブリエル当人もこのアレンジは好きではないようで、のちに出たベストには、別ヴァージョンを入れている。別ヴァージョンとは、ロバートフリップのファーストソロアルバムのEXPOSUREに入っているピアノとフリップのあのギター(フリッパートロニクスみたい)でシンプルに歌われるヴァージョンである。
 実は自分は、この派手なほうのヴァージョンが結構好きで、最初のエレピの音でぞくぞくしてしまう。途中のギター ソロはあまりいただけないけど。ガブリエルのヴォーカルもとってもよくて、感動してしまう。しかし、ヴォーカルに関しては、別ヴァージョンで切々と歌うほうが歌詞の意味は伝わってくるようだ。スプリングスティーンのボーン イン USAがあの派手なバージョンからドブロギターなどを使って泥臭いアレンジになった現在のほうが歌詞本来の意味を表現できているのと同じような感じである。
 どんな心境でこんな歌詞を書いたのだろうか?このアルバムには、名曲のソルズベリーヒルもあって、自分のその時の心境を吐露しているとされる。この一曲だけで自分は、ガブリエルのソロの世界に吸い込まれてしまった。
                                        (2001年7月27日)

MARQUEE MOON/TELEVISION
/FROM MARQUEE MOON(TOM VERLAINE)
ロバート メイプルソープによる写真処理によるジャケット。何か生々しい画像なんだが、妙に涼しい。メンバーがただ並んでいるだけなんだが、十分に存在が感じられる素晴らしいジャケットである。ニューヨークに起きたパンクシーンを代表するバンドであるが、一般に言われるパンクのような激しさはない。もっと古典的な気もするが、ガラスのようにクリアーで、コンクリートの上の温もりと冷たさを感じさせる。この人たちは、パンクで出てこれたが、音楽的にはドアーズとか、ステュージーズとか、ヴェルヴェットアンダーグランドの流れを汲んでいるのではないだろうか。
 曲は、実にシンプル。特徴的なギターのリフ、二人のギターが交替でソロを取り合う、シンプルなリズムセクション、そして、一番の特徴であるトムヴァーラインの神経質そうで実にかっこいい声。だから、曲のよさがわかる。何かの写真で透明なボディのストラトキャスターを弾いていたトム ヴァーラインがのっていた。このギターがこんなににあう人はいない。
(2000年12月12日)

もとのページに戻る